― この記事でわかること ―
ドロガーの機種の違いと選び方
RTKでcm級になる原理(図解)
補正情報の2つの入手方式と配信会社
善意の基準局・自前基準局の使い方
元期/今期と地殻変動補正(測量者向け)
Drogger GPS の具体的な設定値
現場での使い方とFIXのコツ
よくあるトラブルと対処・用語集
もくじ
ドロガーとは(機種比較)
RTK測位の仕組み
補正情報の入手(配信会社・基準局)
元期・今期と地殻変動補正
設定方法(具体的な設定値)
現場での使い方
よくあるトラブルと対処
用語集
出典・参考リンク
01
ドロガー(Drogger)とは
ドロガー(Drogger) は、株式会社ビズステーション(BizStation・長野県松本市) が開発・販売する高精度GNSS受信機シリーズです。スマートフォンやタブレットに Bluetooth でつなぎ、RTKという方式で センチメートル級 の位置を求められます。個人でも導入しやすい価格帯で、測量・農業・ドローンなど幅広く使われています。
主な機種
※構成・仕様・価格は変わります。購入前に公式サイトの最新情報をご確認ください。
ポイント ドロガーは 「移動局(ローバー)」としても「基準局(ベース)」としても 使えます。RWS/RWP なら、1台を既知点に固定して基準局、もう1台を移動局、という運用も可能です。
できること
土地・測量の下調べ、境界点・現況点の位置確認(正式成果は別途)
森林・山林の測量、面積把握
精密農業(自動操舵・可変施肥など)
ドローン・ロボットの位置制御
スマホの地図・GISアプリで「高精度な現在地」 をそのまま使う
📷 写真を差し込む枠(自前写真) ドロガー本体・スマホと接続した様子・ポールに載せた状態など、ご自身で撮影した写真を入れてください(メーカー写真の転載は避ける)。
02
RTK測位の仕組み ― なぜcm級になるのか
スマホのGPS(GNSS単独測位)は便利ですが、誤差が数メートル あります。電波が大気(電離層・対流圏)を通るあいだの遅れなど、さまざまな誤差が乗るためです。
RTK(リアルタイム・キネマティック) は、位置の分かった「基準局」 で誤差を測り、その補正データ(RTCM) を近くの「移動局(あなたのドロガー)」 へリアルタイムに送ります。移動局は同じ誤差を打ち消せるので、センチメートル級 まで精度が上がります。
GNSS衛星(みちびき・GPS・Galileo など)
基準局(既知点)
移動局(ドロガー)
補正データ(RTCM)を配信
→ 同じ誤差を打ち消して、センチメートル級で測位
RTKの基本:位置の分かった基準局の「補正データ」を、移動局(ドロガー)が受け取って高精度化する。
FIX(フィックス)とは ― 解の状態であって「成果保証」ではない
FIX は「整数アンビギュイティ(波数の未知数)が確定し、測位解が固定された状態 」を指します。測るときはまずFIXを確認 しますが、FIX=その座標を正式な測量成果として使ってよい、という意味ではありません 。
FIXは成果の保証ではない FIXであっても、正式な測量成果として使用できることを意味しません 。実際の成果には、観測条件・使用機器・アンテナ高・基準局座標・座標系・元期/今期・セミ・ダイナミック補正・観測時間・再観測・点検・作業規程 など多くの要件が絡みます。誤FIX(間違ってFIX表示になる)もあり得るため、重要点は時間を空けた再観測・既知点での点検 で確かめます。
※ 「水平±1〜3cm」は上空が開け、基準局が近く、良好な衛星配置 といった代表的な条件下での目安です。環境・基線長・機器・観測時間で実際の精度は変わります。
コツ 上空が開けた場所ほどFIXが早く安定します。建物・樹木・鉄塔のそばはマルチパスや衛星不足で不安定になります。
対応衛星系と「2周波」の意味
いまのGNSSは、複数の衛星系を同時に使えます。使える衛星が多いほど、上空が狭い場所でも測位が安定します。
「2周波」 とは、1つの衛星から異なる2つの周波数(例:L1とL2)を受けること。周波数で違って現れる電離層の遅れ を打ち消せるので、初期化(FIXまで)が速く、精度も安定します。ドロガーの主要機種(F9P搭載)は2周波対応です。
精度を左右する要素
衛星数と配置(DOP) …見える衛星が多く、空全体に散らばっているほど精度が良い。かたよっていると悪化(=DOPが大きい)。
仰角(低い衛星) …低空の衛星は大気やマルチパスの影響を受けやすい。
マルチパス …建物・水面・車体などの反射で電波が乱れる。反射物から離れる。
補正の遅延(エイジ) …補正データが古くなる(通信が詰まる)と精度が落ちる。通信の安定が大切。
基準局からの距離 …単独基準局RTKでは、遠いほど誤差が増える。
03
補正情報の入手 ― 配信会社と電子基準局
RTKには補正データ(RTCM)が欠かせません。入手方法は大きく2方式 。ドロガーはどちらにも対応します。まずは全体像を比べます。
A. ネットワーク型RTK(VRS)
= 配信会社の有料サービス
電子基準点網から仮想の基準局 を生成
基準局を自分で用意しなくてよい
全国どこでも1台で すぐ使える
通信必須・多くは月額
測位結果は元期座標 になるのが一般的
B. 単独の固定基準局
= 善意の基準局・自前基準局
1つの固定局のRTCMをそのまま使う
基準局から近い ほど精度が安定(十数km目安)
善意の基準局は無償 のものが多い
局の座標系(元期/今期)に結果が従う
自前基準局なら任意の場所で運用可能
A:主なネットワーク型RTK/配信会社
※料金・対応地域・公共測量対応は各社で異なります。契約前に最新情報を確認してください。
B:単独基準局の種類
善意の基準局(掲示板) …有志が設置し、無償公開している基準局。ドロガーの 「Drogger Ntrip Caster」 を使うと、アプリ(v2.16.285以降)が最寄りの無償基準局を自動選択(NEARマウントポイント) してくれます。※精度のため、コメント欄で国家座標系(元期)対応 と示された局を選ぶのが安全です。
自前の基準局 …ドロガー(RWS等)をもう1台、既知点に固定して基準局に。内蔵WiFi+NTRIPサーバー機能で自分の移動局へ配信でき、必要ならパスワードで保護できます。基準局の位置は「単独測位で自己測定/他の基準局を使いRTKで自己測定/スタティック測量の成果を入力」の3通りで設定します。
国土地理院の電子基準点 …全国約1,300点。これを既知点とする基準点測量や、各種補正配信のもとになっています。
基準局 電子基準点網/ 善意の基準局
配信(NTRIP) キャスター経由で インターネット配信
スマホ Drogger GPS (携帯回線)
ドロガー 受信機 Bluetooth
補正データが手元の受信機に届くまで
基準局 → NTRIP配信 → スマホ(Drogger GPS)→ Bluetoothでドロガー受信機、という流れで補正が届く。
どちらを選ぶ? 全国どこでもすぐ・安定重視ならネットワーク型RTK(有料) 。費用を抑える・近くに使える局があるなら善意の基準局や自前基準局 。用途と現場で選びます。
04
元期・今期と地殻変動補正 ― 測量で使うなら必読
測量の成果として座標を使うときに避けて通れないのが 「元期(がんき)」と「今期(こんき)」 です。日本は地殻変動でわずかに動き続けているため、同じ点でも“いつの座標か”で値が変わります。
元期 …「測地成果2011」の基準日。ひとつの固定された基準日 で、正式な成果(座標値)はこの元期の値です。
今期 …観測した「その日」の座標。地殻変動の分だけ元期からずれています(元期と今期で11年・地域により25年ほどの差)。
元期の座標 正式な成果値
今期の座標 観測した日の値
地殻変動によるずれ
セミ・ダイナミック補正で「今期 ⇄ 元期」を変換する
観測は今期、成果は元期。その差を埋めるのが「セミ・ダイナミック補正」。
RTKの結果はどちらになる?
RTKは基準局に対する相対位置 を求めるので、基準局の座標系に結果が従います。
基準局が元期 の座標 → 測位結果も元期
基準局が今期 の座標 → 測位結果も今期
ネットワーク型RTK(VRS) の結果は元期座標 になるのが一般的
要注意 善意の基準局には今期の座標で運用されている局 もあります。今期のまま成果に使うと元期の成果とずれます。掲示板のコメントで「国家座標系(元期)」対応かを確認 し、必要に応じてセミ・ダイナミック補正 で変換してください。
セミ・ダイナミック補正 は、元期↔今期の変動量を電子基準点の連続観測から求め、5km間隔の格子点 の補正量として国土地理院が提供するものです(パラメータは年度ごとに更新 )。ジェノバなどは地殻変動補正情報も案内しています。
05
設定方法 ― Drogger GPS アプリ
ドロガーは、Android用の 「Drogger GPS」アプリ (Google Play・Android 5.0以上)で設定・操作します。基本の流れは次の5ステップです。
アプリを入れる Google Play で「Drogger GPS」を検索してインストール。アプリは最新版に更新しておきます。 この工程の写真を入れる
Bluetoothでペアリング ドロガー本体の電源を入れ、Androidの Bluetooth 設定で本体(DG-PRO1…)とペアリング。アプリを開いて受信機に接続します。 この工程の写真を入れる
「仮の現在地アプリ」に設定(モックロケーション) 設定 → デバイス情報 → ビルド番号を連続タップして開発者モード を有効化。システム → 開発者向けオプション → 仮の現在地アプリで Drogger GPS を選びます。これで他のアプリでも高精度な現在地が使えます。この工程の写真を入れる
NTRIP(補正の配信元)を設定 配信会社または基準局からもらった値を入力します。 この工程の写真を入れる
RTK設定で「移動局(Rover)」をON 歯車マーク → RTK → Rover(移動局)をON。この端末を移動局として使う設定にすると、補正が効いて FIX を目指します。 この工程の写真を入れる
NTRIPに入れる主な設定値
NTRIP設定では、次の項目を入力します(値は配信会社・基準局から受け取ります)。
善意局(Drogger Ntrip Caster) host: ntrip1.bizstation.jpport: 2101 mount: NEAR(最寄り自動)
📋 ホスト(ntrip1.bizstation.jp)をコピー
ポイント 画面の呼び名や場所はアプリのバージョンで少しずつ変わります。うまくいかないときは設定を一度デフォルトに戻す のも有効。最新の正確な手順はビズステーション公式マニュアル (下部リンク)と、桜町測量などの解説を参照してください。
📱 設定画面のスクリーンショット枠 Bluetoothペアリング・仮の現在地アプリ選択・NTRIP入力・RTK(Rover)設定などの画面キャプチャを差し込むと、さらに分かりやすくなります。
06
現場での使い方
アンテナを立てる ポールや三脚にドロガーを載せ、上空が開けた場所へ。アンテナ高 を正しく設定・記録します(点の高さに直結)。 この工程の写真を入れる
接続と補正を確認 受信機・NTRIPに接続し、衛星数と解の状態が FIX かを確認。 この工程の写真を入れる
測る・記録する 点の座標を記録し、対応する測量・GISアプリに取り込みます。 この工程の写真を入れる
他アプリで高精度な現在地を使う 「仮の現在地アプリ」に設定済みなので、地図・ナビ・農業・GISなど他のAndroidアプリでも、ドロガーの高精度な位置 がそのまま反映されます。 この工程の写真を入れる
コツ FIXを待つ のが基本。Floatのまま記録すると精度が出ません。同じ点を少し時間を空けて2回測り、値が一致するかで信頼性を確認する方法もあります。
📷 使用シーンの写真枠 現場でポールに載せて測る様子、スマホ画面でFixしている様子など。自分で撮影した写真を入れてください。
07
よくあるトラブルと対処
FIXしない・FLOATのまま 上空の開けた場所へ移動する/基準局が遠すぎないか確認(近い局へ)/NTRIP接続と衛星数を確認/設定を一度デフォルトに戻す、を順に試します。建物・樹木の近くはマルチパスで安定しません。
受信機とBluetoothがつながらない 本体の電源・充電を確認/Androidの Bluetooth 設定でペアリングし直す/アプリを再起動。ペアリング名は DG-PRO1… です。
NTRIPに接続できない ホスト・ポート・マウントポイント・ID・パスワードの入力を確認/携帯回線が圏内か確認/契約や善意局の稼働状況を確認します。ポートは多くが 2101 です。
他アプリに高精度な位置が反映されない 開発者向けオプションの「仮の現在地アプリ」がDrogger GPSになっているか を確認。設定が外れていると反映されません。
成果の座標が、ほかの資料とわずかにずれる 元期・今期の違いの可能性があります(本文04参照)。基準局が今期のままだと元期の成果とずれます。国家座標系(元期)対応の局を使うか、セミ・ダイナミック補正で変換します。
標高(高さ)が思ったより合わない まずアンテナ高の設定・記録 を確認します。また、GNSSが出すのは楕円体高で、標高にはジオイド高の補正が必要です。使うアプリ・成果でどの高さを扱っているかを確認してください。
FIXしたのに、点の値がばらつく マルチパスや一時的な誤FIXの可能性。時間を空けて2回測り 、値が一致するかで確認します。上空の開けた場所へ移動し、衛星数・配置(DOP)が良い状態で測り直します。
どの補正サービスを選べばいい? 全国どこでもすぐ・安定重視ならネットワーク型RTK(VRS・有料) 。近くに使える局があり費用を抑えたいなら善意の基準局 。公共測量など要件がある場合は、対応可否を各サービスに確認します(本文03参照)。
08
用語集
GNSS GPS・みちびき(QZSS)・Galileo など測位衛星システムの総称。
RTK 基準局の補正でリアルタイムにcm級測位する方式。
基準局/移動局 基準局=位置が既知の固定点。移動局=測る側(ドロガー)。
RTCM RTK補正データの共通フォーマット。
NTRIP 補正データをインターネット経由で配信・受信する仕組み。
VRS 電子基準点網から仮想の基準局を作るネットワーク型RTK。
FIX/FLOAT FIX=整数値が確定し測位解が固定した状態(成果利用の可否は別途要件確認)。FLOAT=未確定。測るのはFIX時。
元期/今期 元期=成果2011の基準日(成果値)。今期=観測日の座標。
セミ・ダイナミック補正 地殻変動分を補正し、今期⇄元期を変換する国土地理院の仕組み。
マウントポイント NTRIPで使う基準局/VRSの識別名。
DMP ドロガーの傾き・方位補正機能(RWS等)。
マルチパス 建物等の反射で電波が乱れ精度が落ちる現象。
全体の注意 このページはドロガーGNSSの一般的な解説 です。製品仕様・手順・サービス条件・料金は変わることがあります。導入・運用、とくに公共測量など正式な成果として使う場合は、作業規程や機器・基準局の要件を確認し、メーカー・各サービスの最新の公式情報 を必ずご参照ください。