GNSS / RTK Receiver — Complete Guide

ドロガー(Drogger)GNSS 完全ガイド
― 仕組み・設定・使い方 ―

スマートフォンにつないで、センチメートル級の位置がわかる高精度GNSS受信機「ドロガー(Drogger)」。機種の違いからRTKの原理、補正情報の入手(配信会社・電子基準局)、測量で外せない「元期・今期」、アプリの具体的な設定値、現場での使い方、トラブル対処までを、図解でまとめました。

RTK / センチメートル級Drogger GPS アプリNTRIP 補正電子基準局・善意の基準局元期 / 今期

― この記事でわかること ―

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ドロガー(Drogger)とは

ドロガー(Drogger)は、株式会社ビズステーション(BizStation・長野県松本市)が開発・販売する高精度GNSS受信機シリーズです。スマートフォンやタブレットに Bluetooth でつなぎ、RTKという方式で センチメートル級の位置を求められます。個人でも導入しやすい価格帯で、測量・農業・ドローンなど幅広く使われています。

主な機種

機種特徴向いている用途
DG-PRO1RW2周波(L1/L2)RTK・u-blox F9P。基本モデル。まず試したい/コスト重視
DG-PRO1RWSF9P+DMP(傾斜・方位補正)、内蔵WiFi、単体でNTRIPサーバー(基準局)にもなれる。測量・傾けての観測・基準局運用
RWP(一体型パッケージ)RWS+アンテナ+グランドプレーン+電源+三脚アタッチメントを一体化。乾電池(006P)で約3時間。持ち運び・すぐ現場投入
RZS シリーズ上位ライン。マルチバンド等の高機能。より高い性能が必要な場面

※構成・仕様・価格は変わります。購入前に公式サイトの最新情報をご確認ください。

ポイントドロガーは 「移動局(ローバー)」としても「基準局(ベース)」としても使えます。RWS/RWP なら、1台を既知点に固定して基準局、もう1台を移動局、という運用も可能です。

できること

📷写真を差し込む枠(自前写真)ドロガー本体・スマホと接続した様子・ポールに載せた状態など、ご自身で撮影した写真を入れてください(メーカー写真の転載は避ける)。
02

RTK測位の仕組み ― なぜcm級になるのか

スマホのGPS(GNSS単独測位)は便利ですが、誤差が数メートルあります。電波が大気(電離層・対流圏)を通るあいだの遅れなど、さまざまな誤差が乗るためです。

RTK(リアルタイム・キネマティック)は、位置の分かった「基準局」で誤差を測り、その補正データ(RTCM)を近くの「移動局(あなたのドロガー)」へリアルタイムに送ります。移動局は同じ誤差を打ち消せるので、センチメートル級まで精度が上がります。

GNSS衛星(みちびき・GPS・Galileo など) 基準局(既知点) 移動局(ドロガー) 補正データ(RTCM)を配信 → 同じ誤差を打ち消して、センチメートル級で測位
RTKの基本:位置の分かった基準局の「補正データ」を、移動局(ドロガー)が受け取って高精度化する。

FIX(フィックス)とは ― 解の状態であって「成果保証」ではない

FIXは「整数アンビギュイティ(波数の未知数)が確定し、測位解が固定された状態」を指します。測るときはまずFIXを確認しますが、FIX=その座標を正式な測量成果として使ってよい、という意味ではありません

状態意味精度の目安(代表的な条件下)
FIX(フィックス)整数値が確定・測位解が固定水平 ±1〜3cm 程度 ※条件次第
FLOAT(フロート)整数値が未確定(収束途中)数十cm〜数m / 記録には使わない
単独測位(補正なし)補正を受けていない数m(サブメートルの機種も)/概位のみ
FIXは成果の保証ではないFIXであっても、正式な測量成果として使用できることを意味しません。実際の成果には、観測条件・使用機器・アンテナ高・基準局座標・座標系・元期/今期・セミ・ダイナミック補正・観測時間・再観測・点検・作業規程など多くの要件が絡みます。誤FIX(間違ってFIX表示になる)もあり得るため、重要点は時間を空けた再観測・既知点での点検で確かめます。
※ 「水平±1〜3cm」は上空が開け、基準局が近く、良好な衛星配置といった代表的な条件下での目安です。環境・基線長・機器・観測時間で実際の精度は変わります。
コツ上空が開けた場所ほどFIXが早く安定します。建物・樹木・鉄塔のそばはマルチパスや衛星不足で不安定になります。

対応衛星系と「2周波」の意味

いまのGNSSは、複数の衛星系を同時に使えます。使える衛星が多いほど、上空が狭い場所でも測位が安定します。

衛星系運用ひとこと
GPSアメリカもっとも基本。
みちびき(QZSS)日本日本の上空に長くとどまり、都市部・山間でも見えやすい。
GLONASSロシア衛星数を補う。
GalileoEU高精度化に寄与。
BeiDou中国アジアで衛星数が多い。

「2周波」とは、1つの衛星から異なる2つの周波数(例:L1とL2)を受けること。周波数で違って現れる電離層の遅れを打ち消せるので、初期化(FIXまで)が速く、精度も安定します。ドロガーの主要機種(F9P搭載)は2周波対応です。

精度を左右する要素

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補正情報の入手 ― 配信会社と電子基準局

RTKには補正データ(RTCM)が欠かせません。入手方法は大きく2方式。ドロガーはどちらにも対応します。まずは全体像を比べます。

A. ネットワーク型RTK(VRS)

= 配信会社の有料サービス
  • 電子基準点網から仮想の基準局を生成
  • 基準局を自分で用意しなくてよい
  • 全国どこでも1台ですぐ使える
  • 通信必須・多くは月額
  • 測位結果は元期座標になるのが一般的

B. 単独の固定基準局

= 善意の基準局・自前基準局
  • 1つの固定局のRTCMをそのまま使う
  • 基準局から近いほど精度が安定(十数km目安)
  • 善意の基準局は無償のものが多い
  • 局の座標系(元期/今期)に結果が従う
  • 自前基準局なら任意の場所で運用可能

A:主なネットワーク型RTK/配信会社

サービス(配信会社)方式特徴
ジェノバネットワーク型RTK(VRS)民間の代表格。測量分野で広く利用。地殻変動補正情報も提供。
テラサット(テラサット・ジャパン/日本テラサット)ネットワーク型GNSSデータサービスVRS配信のほか、後処理用データのダウンロード配信にも対応。
ソフトバンク ichimill(イチミル)独自基準点網+みちびき全国3,300局以上の独自基準点。公共測量向けNTRIP(G-VRS)も提供。
ALES(アレス)電子基準点ベースのVRS個人向けセンチメートル級サービスやスマホアプリも展開。
NTTドコモGNSS位置補正情報サービス大手キャリアの補正配信。
日本GPSデータサービスネットワーク型RTK(VRS)VRS方式の民間サービス。

※料金・対応地域・公共測量対応は各社で異なります。契約前に最新情報を確認してください。

B:単独基準局の種類

基準局電子基準点網/善意の基準局 配信(NTRIP)キャスター経由でインターネット配信 スマホDrogger GPS(携帯回線) ドロガー受信機Bluetooth 補正データが手元の受信機に届くまで
基準局 → NTRIP配信 → スマホ(Drogger GPS)→ Bluetoothでドロガー受信機、という流れで補正が届く。
どちらを選ぶ?全国どこでもすぐ・安定重視ならネットワーク型RTK(有料)。費用を抑える・近くに使える局があるなら善意の基準局や自前基準局。用途と現場で選びます。
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元期・今期と地殻変動補正 ― 測量で使うなら必読

測量の成果として座標を使うときに避けて通れないのが 「元期(がんき)」と「今期(こんき)」 です。日本は地殻変動でわずかに動き続けているため、同じ点でも“いつの座標か”で値が変わります。

元期の座標正式な成果値 今期の座標観測した日の値 地殻変動によるずれ セミ・ダイナミック補正で「今期 ⇄ 元期」を変換する
観測は今期、成果は元期。その差を埋めるのが「セミ・ダイナミック補正」。

RTKの結果はどちらになる?

RTKは基準局に対する相対位置を求めるので、基準局の座標系に結果が従います。

要注意善意の基準局には今期の座標で運用されている局もあります。今期のまま成果に使うと元期の成果とずれます。掲示板のコメントで「国家座標系(元期)」対応かを確認し、必要に応じてセミ・ダイナミック補正で変換してください。

セミ・ダイナミック補正は、元期↔今期の変動量を電子基準点の連続観測から求め、5km間隔の格子点の補正量として国土地理院が提供するものです(パラメータは年度ごとに更新)。ジェノバなどは地殻変動補正情報も案内しています。

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設定方法 ― Drogger GPS アプリ

ドロガーは、Android用の 「Drogger GPS」アプリ(Google Play・Android 5.0以上)で設定・操作します。基本の流れは次の5ステップです。

  1. アプリを入れるGoogle Play で「Drogger GPS」を検索してインストール。アプリは最新版に更新しておきます。この工程の写真を入れる
  2. Bluetoothでペアリングドロガー本体の電源を入れ、Androidの Bluetooth 設定で本体(DG-PRO1…)とペアリング。アプリを開いて受信機に接続します。この工程の写真を入れる
  3. 「仮の現在地アプリ」に設定(モックロケーション)設定 → デバイス情報 → ビルド番号を連続タップして開発者モードを有効化。システム → 開発者向けオプション → 仮の現在地アプリDrogger GPS を選びます。これで他のアプリでも高精度な現在地が使えます。この工程の写真を入れる
  4. NTRIP(補正の配信元)を設定配信会社または基準局からもらった値を入力します。この工程の写真を入れる
  5. RTK設定で「移動局(Rover)」をON歯車マーク → RTK → Rover(移動局)をON。この端末を移動局として使う設定にすると、補正が効いて FIX を目指します。この工程の写真を入れる

NTRIPに入れる主な設定値

NTRIP設定では、次の項目を入力します(値は配信会社・基準局から受け取ります)。

項目内容
ホスト(アドレス)キャスターのサーバー名配信会社指定/善意局は ntrip1.bizstation.jp
ポート接続ポート番号多くは 2101
マウントポイント使う基準局/VRSの識別名局ごとの8桁コード等。NEARで最寄り自動選択
ユーザーID / パスワード認証情報契約・局の設定に従う
善意局(Drogger Ntrip Caster) host: ntrip1.bizstation.jpport: 2101mount: NEAR(最寄り自動)
ポイント画面の呼び名や場所はアプリのバージョンで少しずつ変わります。うまくいかないときは設定を一度デフォルトに戻すのも有効。最新の正確な手順はビズステーション公式マニュアル(下部リンク)と、桜町測量などの解説を参照してください。
📱設定画面のスクリーンショット枠Bluetoothペアリング・仮の現在地アプリ選択・NTRIP入力・RTK(Rover)設定などの画面キャプチャを差し込むと、さらに分かりやすくなります。
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現場での使い方

  1. アンテナを立てるポールや三脚にドロガーを載せ、上空が開けた場所へ。アンテナ高を正しく設定・記録します(点の高さに直結)。この工程の写真を入れる
  2. 接続と補正を確認受信機・NTRIPに接続し、衛星数と解の状態が FIX かを確認。この工程の写真を入れる
  3. 測る・記録する点の座標を記録し、対応する測量・GISアプリに取り込みます。この工程の写真を入れる
  4. 他アプリで高精度な現在地を使う「仮の現在地アプリ」に設定済みなので、地図・ナビ・農業・GISなど他のAndroidアプリでも、ドロガーの高精度な位置がそのまま反映されます。この工程の写真を入れる
コツFIXを待つのが基本。Floatのまま記録すると精度が出ません。同じ点を少し時間を空けて2回測り、値が一致するかで信頼性を確認する方法もあります。
📷使用シーンの写真枠現場でポールに載せて測る様子、スマホ画面でFixしている様子など。自分で撮影した写真を入れてください。
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よくあるトラブルと対処

FIXしない・FLOATのまま
上空の開けた場所へ移動する/基準局が遠すぎないか確認(近い局へ)/NTRIP接続と衛星数を確認/設定を一度デフォルトに戻す、を順に試します。建物・樹木の近くはマルチパスで安定しません。
受信機とBluetoothがつながらない
本体の電源・充電を確認/Androidの Bluetooth 設定でペアリングし直す/アプリを再起動。ペアリング名は DG-PRO1… です。
NTRIPに接続できない
ホスト・ポート・マウントポイント・ID・パスワードの入力を確認/携帯回線が圏内か確認/契約や善意局の稼働状況を確認します。ポートは多くが 2101 です。
他アプリに高精度な位置が反映されない
開発者向けオプションの「仮の現在地アプリ」がDrogger GPSになっているかを確認。設定が外れていると反映されません。
成果の座標が、ほかの資料とわずかにずれる
元期・今期の違いの可能性があります(本文04参照)。基準局が今期のままだと元期の成果とずれます。国家座標系(元期)対応の局を使うか、セミ・ダイナミック補正で変換します。
標高(高さ)が思ったより合わない
まずアンテナ高の設定・記録を確認します。また、GNSSが出すのは楕円体高で、標高にはジオイド高の補正が必要です。使うアプリ・成果でどの高さを扱っているかを確認してください。
FIXしたのに、点の値がばらつく
マルチパスや一時的な誤FIXの可能性。時間を空けて2回測り、値が一致するかで確認します。上空の開けた場所へ移動し、衛星数・配置(DOP)が良い状態で測り直します。
どの補正サービスを選べばいい?
全国どこでもすぐ・安定重視ならネットワーク型RTK(VRS・有料)。近くに使える局があり費用を抑えたいなら善意の基準局。公共測量など要件がある場合は、対応可否を各サービスに確認します(本文03参照)。
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用語集

GNSS
GPS・みちびき(QZSS)・Galileo など測位衛星システムの総称。
RTK
基準局の補正でリアルタイムにcm級測位する方式。
基準局/移動局
基準局=位置が既知の固定点。移動局=測る側(ドロガー)。
RTCM
RTK補正データの共通フォーマット。
NTRIP
補正データをインターネット経由で配信・受信する仕組み。
VRS
電子基準点網から仮想の基準局を作るネットワーク型RTK。
FIX/FLOAT
FIX=整数値が確定し測位解が固定した状態(成果利用の可否は別途要件確認)。FLOAT=未確定。測るのはFIX時。
元期/今期
元期=成果2011の基準日(成果値)。今期=観測日の座標。
セミ・ダイナミック補正
地殻変動分を補正し、今期⇄元期を変換する国土地理院の仕組み。
マウントポイント
NTRIPで使う基準局/VRSの識別名。
DMP
ドロガーの傾き・方位補正機能(RWS等)。
マルチパス
建物等の反射で電波が乱れ精度が落ちる現象。
全体の注意このページはドロガーGNSSの一般的な解説です。製品仕様・手順・サービス条件・料金は変わることがあります。導入・運用、とくに公共測量など正式な成果として使う場合は、作業規程や機器・基準局の要件を確認し、メーカー・各サービスの最新の公式情報を必ずご参照ください。