GNSS Fundamentals — for Professionals

GNSSの基礎
― 位置がわかる仕組みと、精度・誤差のすべて ―

「なぜ衛星で位置がわかるのか」「なぜRTKだとcm級になるのか」を、測量・実務の視点で図解します。衛星測位システムの種類、周波数帯、測位方式ごとの精度、電離層やマルチパスといった誤差要因、測地系と高さの扱いまで。ドロガーを使いこなす土台になる知識をまとめました。

測位の原理コード / 搬送波位相多周波誤差要因DOP / FIX測地系・高さ

― このページでわかること ―

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GNSSとは(GPSとの違い)

GNSS(Global Navigation Satellite System=全球測位衛星システム)は、人工衛星を使って地球上の位置を求める仕組みの総称です。よく耳にする GPS は、そのうちアメリカが運用する1系統の名前にすぎません。

ここが混同ポイント「GPS測量」と言っても、実際の受信機は GPS だけでなく、みちびき・GLONASS・Galileo・BeiDou など複数の衛星群をまとめて使っています。正確には GNSS 測位です。使える衛星が多いほど、上空が開けていない場所でも位置が決まりやすくなります。

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位置がわかる原理

衛星からは「いつ・どの衛星が電波を出したか」の情報が送られてきます。受信機は電波が届くまでの時間から、その衛星までの距離を計算します。そして複数の衛星までの距離が分かれば、「その距離を満たす1点」として自分の位置が決まります。

受信機(現在地) 距離=電波の伝わる時間×光速 複数衛星までの距離が交わる1点=現在地
複数の衛星までの距離が交わる1点として、位置が決まります(当サイト作成の説明図)。

なぜ「4機以上」必要なのか

位置は緯度・経度・高さの3つを求めるため、原理的には3機で足ります。しかし、受信機の時計は衛星ほど正確ではなく時計のズレも未知数になるため、これを含めて合計4つの未知数を解く必要があります。だから最低4機、実務では信頼性のため5機以上・上空が開けた配置が望まれます。

時刻がカギ電波は1秒で約30万km進みます。時間のわずかなズレが大きな距離誤差になるため、衛星は原子時計を積み、受信機側の時計誤差は計算で取り除きます。
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コード測位と搬送波位相測位

「距離の測り方」には大きく2通りあり、これが精度の差を生みます。

方式測るもの精度の目安使われ方
コード測位電波にのった符号(コード)で伝搬時間を測る数m級カーナビ・スマホ・単独測位
搬送波位相測位電波そのものの波(波長 約19cm)の位相を数える数mm〜cm級RTK・スタティックなど測量

搬送波位相は波1つが約19cmと細かいため、波の位相を精密に読めば非常に高精度になります。ただし「波を何個ぶん数えたか(整数値バイアス=アンビギュイティ)」という未知数が残るため、これを確定(FIX)させる計算が要ります。RTKやスタティックは、この確定処理を行ってcm級を実現しています。

FIXとFLOATアンビギュイティが整数に確定した状態がFIX(固定解)、確定していない途中の状態がFLOAT(フロート解)です。測るのは原則FIX時ですが、FIXは「解が固定した状態」を示すもので、それだけで成果の妥当性を保証しません。観測条件・座標系・点検などの要件は別途必要です(総合ガイドのFIX解説)。測量方法のページで実務の流れを解説しています。

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世界の衛星測位システム

現在、世界には複数の衛星測位システムが運用され、対応受信機はこれらをまとめて利用します。地球のまわりを回る測位衛星は、4つの全世界システムだけで合計およそ130機にのぼります(2026年時点の目安)。ドロガー(u-blox F9P)も複数系統に対応しています。

世界の衛星の全体像

測位衛星は、地球を広く覆うMEO(中軌道/高度約2万km)を回るものが主力です。加えて、特定地域を厚くカバーするために準天頂軌道(QZO)静止軌道(GEO)傾斜対地同期軌道(IGSO)の衛星を組み合わせるシステム(みちびき・BeiDou・NavIC)もあります。多くのシステムが同時に見えるほど、初期化の短縮・測位率の向上・精度の安定につながります。

システム運用国・地域衛星数(目安)軌道主な信号
GPSアメリカ約31機MEO(約20,200km)L1 / L2 / L5
GLONASSロシア約24機MEO(約19,100km)L1 / L2 / L3
GalileoEU(欧州)約24機(30機構成)MEO(約23,200km)E1 / E5a・E5b / E6
BeiDou(北斗)中国約35機MEO+IGSO+GEOB1 / B2 / B3
QZSS「みちびき」日本4→7機へ整備中準天頂(QZO)+GEOL1 / L2 / L5 / L6
NavICインド約7機GEO+IGSOL5 / S帯
※ 衛星数・信号は更新されます。GPS/GLONASS/Galileo/BeiDouが全世界システム、QZSS/NavICは特定地域を補完・補強する地域システムです。

各系統の特徴(もう少し詳しく)

みちびき(QZSS)を少し詳しく

みちびきは日本のほぼ真上(天頂付近)を長く通る軌道の衛星を含み、ビルや山で空が狭い場所でも高い衛星を確保しやすいのが利点です。GPSと同じ信号を出して補完するほか、精度を高める補強信号(CLAS/MADOCAなど)も提供します。国は7機体制を目指して整備を進めており(順次打上げ中)、これが確立すると日本上空に常時4機以上となり、みちびきだけでも持続的な測位が可能になるとされています。

※ 衛星の運用機数・体制は年々更新されます。最新は内閣府「みちびき」公式サイト(下部リンク)でご確認ください。

各メーカー受信機の衛星対応状況

測量用の高精度GNSS受信機は、いまや主要4〜6系統・多周波に対応するのが標準です。対応系統・周波数が多いほど、都市部や山間でもFIXしやすく安定します。代表的なメーカーと傾向は次のとおりです。

メーカー/例タイプ対応衛星系(傾向)周波数
ビズステーション ドロガー(u-blox F9P)スマホ接続・普及機GPS・QZSS・GLONASS・Galileo・BeiDou2周波(L1/L2帯)
Trimble(ニコン・トリンブル)測量用ハイエンド全主要系統に対応多周波
Leica(ライカ)測量用ハイエンド全主要系統に対応多周波
Topcon/Sokkia測量用ハイエンド全主要系統に対応多周波
Septentrio高精度モジュール/受信機全主要系統に対応多周波
u-blox(F9P等・OEM)組込みモジュールGPS・QZSS・GLONASS・Galileo・BeiDou2周波
選ぶときの見方何系統・何周波に対応するか」と「QZSSの補強(CLAS等)に対応するか」が、実務での安定度を大きく左右します。ドロガー(2周波・5系統対応)は、普及価格帯ながら測量に必要な土台を満たしています。個々の対応内容・最新仕様は各メーカーの公式情報をご確認ください。

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周波数帯と「多周波」

衛星は複数の周波数(L1・L2・L5など)で信号を出しています。受信機がいくつの周波数を受けられるかで、精度と安定性が変わります。

なぜ2周波が効くのか電離層による遅れは周波数によって量が変わる性質があります。2つの周波数の測定値を組み合わせると、この遅れを計算で除去できます。基準局から10km以上離れる場合は2周波が実質必須です。
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測位方式と精度の階層

同じGNSSでも、補正のかけ方で精度がまったく変わります。おおまかな精度の階層は次のとおりです。

方式精度の目安補正の仕組み
単独測位(スマホ等)数m1台のみ。補正なし。
DGPS(ディファレンシャル)1m前後基準局のコード誤差で補正。
RTK(リアルタイム)数cm近くの基準局の搬送波位相で補正。解説
ネットワーク型RTK(VRS)数cm電子基準点網から仮想基準局を作り配信。解説
PPP / PPP-RTK数cm〜dm精密な衛星軌道・時計情報で単独高精度化。収束に時間がかかる場合あり。
スタティック(後処理)数mm〜cm長時間観測し持ち帰って基線解析。最高精度。解説
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誤差の要因と対策

GNSSの誤差は、大気・環境・衛星・受信機のどこで生じるかで整理できます。RTKやスタティックは、これらの多くを基準局との差分で打ち消します。

誤差要因内容主な対策
電離層遅延上空の電離層で電波が屈折・遅延。距離が離れるほど影響大。2周波で除去/基準局を近くに
対流圏遅延大気(気温・気圧・水蒸気)で電波が遅延。大気モデルで補正/基準局との差分
マルチパス建物・地面・水面などの反射波を拾う。都市部・低仰角で大。開けた場所で観測/低仰角衛星を除外/グランドプレーン
衛星の軌道・時計放送情報のわずかな誤差。精密暦(後処理)/基準局との差分
受信機雑音・アンテナ機器内部の雑音、アンテナ位相中心のばらつき。良質なアンテナ/PCV補正/アンテナ高を正確に
差分でなぜ消える?基準局と観測点が近ければ、電離層・対流圏・衛星側の誤差は両方でほぼ同じだけかかります。両者の観測を引き算すると、共通する誤差が相殺され、高精度になります。これがRTK・スタティックの基本原理です。

アンテナ位相中心(PCO/PCV)

アンテナが電波を受ける「電気的な中心」は、目に見える物理的な中心とは少しズレ、方向によっても変わります。このオフセット(PCO)と方向依存の変動(PCV)を補正し、アンテナ高を正しく測ることが、高さ精度に直結します。

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精度の指標(DOP・FIX)

観測が「よい状態か」を判断する代表的な指標です。

高さは水平より不利衛星は地平線から上にしか無いため、高さ方向(VDOP)は水平より精度が出にくいのが一般的です。標高が重要な現場では観測時間・環境に余裕を持たせます。
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測地系と高さ

GNSSが出す座標は「どの基準(測地系)で表した座標か」を意識しないと、地図や成果と食い違います。

座標の基準(測地系)

3つの「高さ」に注意

よくある落とし穴GNSSの高さをそのまま標高として使わないこと。ジオイドモデルで必ず標高に変換します。測量方法のページ・アプリ設定で扱いを確認してください。

元期と今期(地殻変動)

日本は地殻変動で少しずつ動いています。基準を定めた時点の座標が元期、観測時点の座標が今期。両者はセミ・ダイナミック補正で結びます。VRSは元期、善意の基準局は今期になりがちで、混在に注意が必要です。

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用語集

GNSS
全球測位衛星システムの総称。GPS・みちびき等を含む。
擬似距離(コード)
コードで測る衛星までの距離。数m級。
搬送波位相
電波の波(約19cm)の位相で測る距離。mm〜cm級。
アンビギュイティ
搬送波の「波の数」の未知数。確定するとFIX。
FIX / FLOAT
整数確定した固定解/未確定のフロート解。
DOP
衛星配置のよさ。小さいほど良好(PDOP/HDOP/VDOP)。
電離層/対流圏遅延
大気による電波の遅れ。主要な誤差要因。
マルチパス
反射波を拾う現象。都市部・低仰角で大。
楕円体高/標高
GNSSが出す高さ/ジオイドで補正した海抜の高さ。
元期/今期
基準時点の座標/観測時点の座標。地殻変動で差が出る。